医療応用が進む、炭素の可能性
炭素は、原子の結合構造の違いにより性質が全く異なります。例えば、黒鉛はよく電気を通しますが、ダイヤモンドは電気を通さない絶縁体です。またダイヤモンドは地球上で一番硬い性質を持つ物質といわれていましたが、ナノテクノロジーの進展により、隕石から発見された炭素結晶「ロンズデーライト」が計算値ではありますが、ダイヤモンドよりも硬いことが報告されています。さらに火山などの高圧下で生じる「ウルツ鉱型窒化ホウ素」は現在最も硬い天然物質だといわれています。ただし、人工物も含めた場合では、ナノダイヤモンドの一種である「ハイパーダイヤモンド」が最も硬いことが分かっています。ナノダイヤモンドは生体への悪影響が少ないことから医療応用が進められています。
人のからだの構成元素、炭素
人体では、水分を除くと約半分が炭素で出来ており、DNAやタンパク質、脂質や炭水化物などの形で生命活動を支えています。一酸化炭素は炭素が燃焼する際、酸素が不十分な環境で発生する気体です。血液中のヘモグロビンは酸素と結びついて全身に酸素を運びますが、一酸化炭素は酸素に比べて200倍以上もヘモグロビンと結びつきやすい性質を持っています。このためヘモグロビンは一酸化炭素があると酸素と結びつくことができず、酸素不足から一酸化炭素中毒を引き起こします。
CO、CO2が人体に及ぼす影響
一酸化炭素はたばこの煙にも1~3%ほど含まれ、体内に長時間残留することで慢性的な酸欠を引き起こし、赤血球の増加や血管の動脈硬化を促進するといわれています。呼気中の一酸化炭素濃度は簡単に測定でき、喫煙の目安として用いられています。
二酸化炭素(CO2)は、地下から供給された化石燃料が利用された際に放出され地球温暖化の原因となっていることは有名です。しかしCO2が健康に与える影響をご存知な方はまだ少数派なのではないでしょうか。CO2は10,000ppm を超えると倦怠感や頭痛などの不快感を生じさせるため、基本的には1,000ppm 以下が望ましいとされています。1,000ppmとは外気中のCO2濃度が400ppm前後なので、外気の2倍程度となります。室内CO2濃度は部屋の大きさや密閉性、人数などに関係するため安価なセンサーが開発されてもなかなか普及しませんでした。
室内のCO2濃度=適切な換気の基準
しかし、新型コロナ対策で換気の重要性が注目されたことで、室内CO2濃度の変化から換気状況を把握し、さらに室内CO2濃度を「適切な換気の基準」とするための研究が進められています。
炭素は、生物にとっての基本であり、研究にとっての可能性であり、生活においては直接目に見えないものです。身の回りの不思議な炭素に目を向けることで、ちょっとわくわくしてみてはいかがでしょうか。